<トラック運送業の36協定の限度時間数>
東京・渋谷区代々木(新宿駅エリア)のCo.Co.Labo経営・社労士事務所です。
当事務所は「業界別労務管理」に精通をしています。業界が異なれば法規制が異なり、職種が異なれば働き方が変わります。
クライアント企業様の労務管理の業界特性と法規制を熟知し、その業界に沿ったアドバイス、コンサルティングを実施するのが当事務所のスタンス
です。本ページでは「トラック運送業の限度時間」について解説しています。
なぜ、詳しいのか?
幸いにして、東京、埼玉、福島を中心にトラック運送業からの顧問契約のご相談を頂く機会があり、事務所で業界研究をおこないつつ、クライアン
様にもご協力を頂きまして、改善基準の正確な理解に加えて、労基署調査立会、国交省の実施調査等にも立会しています。
トラック業界の改善基準、国交省の法規制を踏まえた就業規則を作成できる数少ない社労士の1人です。
多くの労働基準監督署で、改善基準の解釈を幾度となくヒアリングしていますので取締のポイントも当然に把握しています。
<36協定書の時間外労働の限度時間は適用されない業種の一つ>
自動車運転業務に従事する者には一般の36協定書の限度時間は適用されずに、「改善基準」と呼ばれる別の厚生労働省告示で、「拘束時間」と
呼ばれる業界特有の考え方の時間規制が設定されています。しかし36協定書は届出する義務があります。
なので一般の事業に適用される労働時間の制限は適用除外となる一方で、改善基準に定められている各種の上限時間を踏まえると結果として、
1日・2週間・1ヶ月・1年間の時間外労働が算出できるという仕組みです。
通常の限度時間が適用除外のため「特別条項」という考え方も存在しません。
この仕組みは非常に複雑なので誤った解釈で36協定書が協定され届出されているケースも散見されます。
<改善基準で制限しているのは、労働時間では無く「拘束時間」>
改善基準に登場する「拘束時間」の限度を踏まえて、可能な時間外労働を割り出す必要があります。
「拘束時間」=「労働時間(荷下ろし等の手待ちを含む)+休憩時間」
●1日の最大拘束時間:原則13時間 最大16時間 ※15時間を超える回数は週2回まで
●1か月 293時間(労使協定がある場合には1年のうち6カ月までは年間3516時間を超えない範囲内で、1か月320時間まで延長可能)
●「休息時間」:勤務終了後、「継続8時間以上の急速時間を付与」
※働き方改革で政府が導入を推奨している勤務間インターバルと近い考え方です。
●運転時間:2日(始業時刻から起算して48時間)を平均し、1日あたり9時間かつ、2週間を平均し1週間あたり44時間
●連続運転時間 4時間以内 (運転時間を中断すれば、手待ちでも良い)
1回連続で中断時間は10分以上、かつ、合計30分以上の運転離脱時間が必要です
これらの規制が非常に複雑ですが不適合になってしまうと違反と問われますので、就業規則、労使協定では内容を理解して規定する必要があります。
<改善基準違反は是正勧告書交付>
改善基準(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)は法律ではありませんが労働基準監督署では、告示違反の場合に「是正勧告書」を出し法違反という扱いとなること及び、事案によって是正勧告を受けた事実は、国交省側に違反情報は通知される行政処分を科されるリスクがあるからです。
<改善基準は意外な事に、以下のような業務にも適用されます>
①工場等の従業員の送迎バス
②宿泊客等の送迎バス
③営業社員が営業車で顧客先を訪問する等
③等は盲点になっていることが多く、運送業では無い業界でも、営業車を運転する場合には告示が適用されることになります。
尚、物流部門(配送部門)がある場合には同じく告示が適用されます。
<36協定書の限度時間は、何時間になるのか>
クライアント企業のトラック運送業等から、厚生労働省告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)に定められた拘束時間の限度内で、36協定書をどのように定めたら良いか、良く質問を受けるので計算した資料を公開します。
前提条件:1日の所定労働時間8時間・週5日勤務・休憩時間1時間
※上記の前提条件が異なると計算結果が異なりますのでご注意ください。
※改善基準で休日労働は2週間を通じて1回までという制限がありますのでご注意ください。
[1.変形労働時間制を採用しないケース]
1日の延長時間 「7時間」
算出式:16時間-(労働時間8時間+休憩1時間)=7時間
※16時間は改善基準告示に定める拘束時間の1日の上限です。
2週間の延長時間 「52時間」
算出式:16時間×2週×2日+13時間×2週×3日=142時間
142時間-(労働時間80時間+休憩時間10時間)=52時間
※16時間は改善基準告示に定める拘束時間の1日の上限です。
但し15時間を超える事ができる回数は1週間で1回以内と制限されているため2週間で2回の延長をした想定をしています。
※原則の拘束時間は1日「13時間」と定められていますので上記のような計算式となります。
1か月の延長時間 「127時間」
1か月の法定労働時間 例30日の月で月間所定労働日数20日とした場合
1か月の法定労働時間数=40時間×30日/7日=171.4時間
320時間-(171.4時間+休憩時間21時間)=127時間
1年間の延長時間「1,170時間」
(前提条件として年間労働日数260日)
1年間の法定労働時間数=365日×40時間/7日=2085.714時間
3,516時間-(2085.714時間+休憩時間260時間)=1170.286時間
尚、1年単位の変形労働時間制を採用した場合には、労働基準法で年間労働日数の上限が280日と定められていますので、
「1日7時間」、「2週間52時間」、「1か月127時間」までは同一で、「1年間のみ1150時間」が上限となります。
もちろん、時間外労働の上限で36協定書を締結するとは限りませんが、上限を正確に把握しておくことは言わずもがな重要です。
尚、「トラック協会指導の時間数」は上記時間数よりもかなり少なめに設定されている点にもご注意ください。
【働き方改革との関係】
平成31年(2019年)4月からの労働基準法の時間外労働の規制については、施行から2024年1月1日(施行より5年間)までは経過措置が設けられています。その後は当面は年間960時間の特例が適用されるが予定です。
【就業規則への記載はどのように対応すべきか】
改善基準告示により拘束時間の上限、連続運転時間の上限等が設定されています。
また違反歴の照会、アルコールチェック、点呼、てんかん発作等の運転業務に支障をきたす可能性のある病歴の確認等、トラック運送業に限らず、自動車運転者の労務管理と、就業規則は複雑かつ実態に即したものでないと意味を成しません。
現在、当事務所は東京都内は元より、埼玉県、福島県等のトラック運送業のクライアント企業様を支援しています。トラック運送業、自動車運転が関係する企業の企業様は、是非ともCo.Co.Labo経営・社労士事務所にご用命ください。